ヘレディタリー ラスト トラウマ

徹底ネタバレ『ヘレディタリー継承』結末や何かの正体、伏線と感想考察について ホラー映画としては異例の2時間越えの大作であるにもかかわらず見飽きることなくあっという間の2時間でした。はじめの祖母エレンの死から始まるこの作品はその細部に至るまで2時間後のラストまでとにかく伏線を一つづつ表していく、丁寧なつくりになっています。最近のホラーは悪魔だったり、呪いだったり、恐ろしいモンスターであったり、時にはサイコパスであったり。わかりやすい恐怖がとても受け入れられる風土があります。そして、万人に受け入れられるように怖さは中辛からやや甘口のような刺激で作られ、ホラー映画好きの人にとっては「見終わったけど何も残らない」作品が多いように思います。ヘレディタリー 継承はもちろん刺激的な描写も多くありながらも、一つの家族が祖母エレンの死から受け継いだヘレディタリー(遺産や血縁)でどんどん不幸の谷底に沈んでいく悲しいお話なのです。この映画はホラーであると同時に一つの家族が逃れられない運命の悲しみや絶望を表現した作品です。アニーは幼少から理解に苦しむ母親の元で夢遊病やトラウマを抱えながら生き、二人の息子を失ない、自らも自分で首を切断、長男のピーターはパイモンへの生贄のために育てられ、自らでチャーリーを殺すきっかけを作ってしまいます。娘のチャーリーは男ではないという理由から生贄の候補から外されますが、やはり掟に従い殺されてしまいます。夫のスティーブンに至っては何も理解しないまま丸焼きにされてしまいます。彼らは何か悪いことをしたわけではなく、そういう逃れられない血筋(ヘレディタリー)のもとであるべくして、全員が不幸になるのです。まさに不条理を絵にかいたような作品です。この手の映画ではパイモンを中心に描かれがちですが、結局パイモン自体はラストに数分登場するだけです。パイモンがもっと早く出てきて暴れれば、それは「悪霊もの」のホラー映画になり、全く趣向の映画になります。ですが、あくまでもこの映画での主眼は4人の家族にあります。そして、ジョーンと言う悪意ある介入です。紛れもなく2018年最高に怖く、最高に悲しい1作だったでしょう。アニーは夫のスティーブン、息子のピーターと娘のチャーリーと4人家族でした。彼女はミニチュア制作をしており、近々個展を開く予定でした。ある日、アニーの母親のグラハム家のエレンが亡くなります。エレンは孫のチャーリーをかわいがっており、チャーリーも祖母が亡くなった悲しみを受け止めきれませんでした。抑圧的でどこか母を恐れていたアニーはその死に複雑な気持ちを抱いていました。葬儀が終わってしばらくして、グラハム家では不思議な出来事が起きます。アニーが遺品を整理していると誰かがいる気配がしたり、不思議な光が走ったり、チャーリーが突然グロテスクな絵を描く、死んだ鳥の首を切り取り奇怪な行動をとりはじめたのです。そんなチャーリーの気晴らしになればとアニーはピーターにお願いして彼女を友達のパーティに一緒に連れて行ってもらいます。しばらくピーターが友人と過ごしていると突然ケーキを食べたチャーリーが入ってきて、息苦しそうにしました。急いで病院に連れて行こうと車を飛ばしますが、その途中、鹿を轢きそうなった彼はハンドルを切って窓から顔を出していたチャーリーは電柱に頭をぶつけて首が切断されてしまいます。呆然としたピーターはゆっくりと車を走らせ、家に帰ります。翌朝アニーが出かけようとすると車の中で首なしのチャーリーの死体を見つけ叫びだします。エレンに続きチャーリーを失ったアニーは精神的に参ってしまい、カウンセリングに通うようになり、そこで同じく子供を亡くしているジョーンという女性に出会います。ジョーンに悩みを打ち明けていくアニーですが、ある日彼女が降霊術によって死んだ息子と話ができると言い出します。半信半疑で一緒に立ち会うと突然コップが動いたり不思議なことが起きます。興奮したアニーはジョーンに教えてもらったとおりに自宅でチャーリーを呼び出そうとします。うまくいったアニーはスティーブとピーターにも見てもらおうと二人にも儀式を見せます。二人はひどく怖がりましたが、アニーは儀式がうまくいき興奮していました。アニーがエレンのアルバムを整理しているとふとエレンとジョーンが一緒に写っている写真が何枚もあることに気づきます。そこでは儀式のようなものが行われており、「ペイモン」という悪魔の王様を呼び出す儀式でした。エレンとの関係を隠していたことを不安に思ったアニーはジョーンを探そうとしますが、見つかりません。家に帰ると、ふと屋根裏が気になり覗いてみます。そこには腐敗したエレンの死体があり、儀式の準備のような様相でした。儀式の後からピーターは幻覚のような異常な体験に悩まされていました。突然授業中に自分の頭を何度も机に打ち付けはじめました。スティーブは急いでピーターを連れて帰ります。家ではアニーが屋根裏に死体があるとスティーブ告げ、スティーブは混乱します。アニーは降霊術で使ったチャーリーのノートを燃やすように言います。(アニーが燃やすと自分が燃えてしまうから)スティーブはアニーが精神的におかしくなってしまったと思い、取り合いません。仕方なくアニーは自らノートを暖炉に入れるとスティーブがまる焦げになってしまいました。悲鳴を上げるアニーでしたが、突然真顔になり、正気を失います。学校から連れて帰られたピーターは目を覚まします。リビングまで来ると黒こげになった父スティーブがいました。気配を感じたピーターはアニーに襲われ、走って逃げ屋根裏に逃げます。屋根裏に逃げて安心したピーターはふと天井からアニーが吊るされており、彼女が自分の首を糸鋸で切っていることに気づきます。恐怖で混乱したピーターは窓から外へ飛び降ります。ピーターから何かが抜け出て何かが入り込んでいきます。起き上がった彼は庭の木の上の小屋へ行きます。そこには裸になった悪魔崇拝の男女や、首のない、エレンとアニーがいます。一人がピーターに王冠を被せ、ペイモンの復活を喜んでいました。ここではヘレディタリー継承の謎を解説していきます。この映画で特徴的な造形の一つがアニーのミニチュアです。制作者アニーの心のうちが投影されているのは明らかでそこでは甲斐甲斐しく母親を介助する姿であったり、チャーリーの死後は事故現場を再現したりと、ヘレディタリーはペイモンという悪魔をよみがえらせる儀式が継承されていく話でした。ペイモンとはヨーロッパの伝承あるいは悪魔学に登場する悪魔の1体で。悪魔や精霊に関して記述した文献や、魔術に関して記したグリモワールと呼ばれる書物などにその名が見られるものです。例えば映画ラストシフトではカルト教団が蘇らせたのもペイモンでしたので、悪魔崇拝者にとってはおなじみの悪霊と言えます。ペイモンの名前はヘブライ語の”POMN”(=「チリンチリンという音」)に由来すると言われており、チャーリーの舌打ちはそれを象徴していたのではないかと思います。(完全な私見です)ピーターと友人の家に遊びにいったチャーリーが突然苦しみはじめたのは、もらったケーキにナッツが入っていたからだと考えられます。エレンの葬儀で父スティーブから「チョコレートにナッツは入ってないかい?」と聞かれたことから彼女がナッツアレルギーを持っていたことがわかります。本作の陰の主役と言っていい不気味な存在、チャーリー。彼女は生まれた時からエレンに育てられ、幼いころからその中にパイモンを宿っていました。アニーが行っていた「チャーリーは生まれた時ですら泣かなかった」という発言からもわかります。ただし、チャーリーは男ではないのでパイモンの器にはなりません。それはエレンが行っていた「あなたは男の子になってほしい」という発言からもわかります。車の事故で首を切断されてしまったチャーリー。これは事故だったのでしょうか?答えはNOでチャーリーがぶつけた電柱にはパイモンを示す紋章がありましたので何かしらの力が働いたと考えるようが自然でしょう。パイモンはチャーリーの中に宿っていたと思われるのでその解放という意味でもチャーリーの死は必要でした。また、グラハム家の女性はすべて首を切断されて死ぬ、という慣習が明らかになるので、チャーリーもその類に漏れなかったと言えます。ジョーンとアニーは偶然を装って近づいてきていましたが、二人の出会いは偶然ではありません。彼女は悪魔崇拝者の一人で、エレンとも交友がありました。彼女たちはグラハム家の長男ピーターを介してパイモンを復活させようとしました。そのため、アニーに近づき降霊術と偽りパイモンの儀式をまんまとやらせたのでした。学校にいたピーターは通りの向こうからジョーンが何かを口走っているのを見つけます。それは「お前の肉体から出ていけ」というもので、ペイモンを降臨するためにピーター自身の魂を取り除く必要があったのだと考えられます。パイモンの召喚に必要なのはグラハム家の男子です。エレンはパイモンを召喚するためにアニーの兄のチャールズにそれを期待していましたが、チャールズは16歳で自殺してしまいました。彼はパイモンの儀式に利用される前に「母が自分の中に何かを入れようとした」という謎の文章、のちに重要なヒントとなる言葉を残して死んでいます。なお、父スティーブンは純粋なるグラハム家の男子ではないためパイモンの生贄には不適格となっているようです。屋根裏ではエレンの首なし死体がありました。あそこに運んだのは誰かは明かされていません。夢遊病のアニーがやったとも考えられますが、一人では難しいと思われますのでジョーン含む悪魔崇拝者たちがやったと考えるほうが納得です。一つは腐敗が進んでいるものでしたのでエレンものと思われます。もう一つは死んだばかりのように見えましたので自分で自分の首を切っていたアニーではないかと考えられます。少し複雑なストーリーですが、一つづつ紐解いていくととても興味深い作品です。公式でもネタバレ解説をしてくれているサイトは珍しいです。公式ネタバレサイトはこちら↓2017年はゲットアウト、2018年はこのヘレディタリーがホラー映画の中では特に注目でした。まだ見てない方はぜひご覧ください! Mord!』(「殺人!殺人!殺人!」)というタイトルの短編映画がありました。殺人だからといってホラーとは限らないのですが、怖い映画なのかなぁ・・・という想像はできるタイトルですよね。『ミッドサマー』も、笑えるシーンが散りばめられた「ギャグ映画」だ!という人もいるくらい不思議ではありますが、サイケでスプラッターな「ホラー映画」ではないかと思うのです。そんな作品に出演しながら、イサベルさんは「ホラーは苦手」?イサベル・グリルさんのコメント:ホラー映画の話を聞くと、何が起きたのか気になってネットで調べるの。でもそれで十分!説明を読むだけで起きたシーンのイメージが浮かんで、本編を観られなくなっちゃうの。イメージしただけで本編を観られなくなる、って怖がりですね。 そんなに怖がりなイサベル・グリルさんの初めての長編映画があの『ヘレディタリー』のアリ・アスター監督作品とは。デビュー作『ヘレディタリー』から天才との呼び声がついたアリ・アスター監督ですよ。しかも彼女は『ミッドサマー』のマヤ役で一躍有名になってしまいました。「ホラー・クイーン」なんてイメージがついちゃったら、なんて思わなかったのでしょうか?でもイサベルさんは『ミッドサマー』のオーディションの時点では『ヘレディタリー』を観ていなかったそうです。まだスウェーデンには入ってなかったんですって。アリ・アスター監督の作風を知らなかったから『ミッドサマー』のオーディションを受けたのでしょうか?いやいや、彼女が『ミッドサマー』の脚本を読んだのはオーディションの1年前だとか。ストックホルムでオーディションを受けたことのある舞台の監督が、彼女にマヤの役を提案してきたそうなんですよね。オーディション受けてみたら?(*セリフはイメージです)じゃぁ、本(脚本)読んでみようかな!(*セリフはイメージです)果たして脚本を読んだイサベルさんは、こう思ったそうです:これってすっごいクールだけど、どんなテンションなのかよくわからない・・・ほんとにホラー??イサベルさんには「すごく面白いところとか気色悪い要素が入った”ヒューマンドラマ”」に思えたんだそう。実際、映画を観た人からも「ホラーじゃないね、これ」っていう感想はありましたよね。 祖母の死から数日後、母に頼まれ妹をパーティーに連れて行った結果引き起こされた悪夢のような惨劇崩壊する食卓、追い詰められる兄、何もできない父、顔面を歪める母、舌を鳴らす妹…“継承”を与えるのは常に女“コッ” — やみくろ (@yamikuro1027) イサベルさんは結局オーディションを受けてしまった後に『ヘレディタリー』を観ました。家族が抱えるトラウマと悪魔に取り憑かれる物語はイサベルさんには刺激が強かったようで、何週間も夢に出てきてうなされたそうです。普段ホラーを観ない人がいきなりあの作品から観たら・・・そうなるのも頷けますね・・・。 でもイサベルさんは『ミッドサマー』のマヤ役にとても惹かれてオーディションを受けたそうです。出演作は少ないですが、すでに彼女の中には「難しい役」をやることへの興味が強くあるんだそうです。「歴史を通して長年若い女性に課せられてきた、モラルや規範にクギを刺すような」難しい役どころです。彼女の出演作の1つに、スウェーデンで公開された短編映画『Svartklubb(スヴァルトクラブ)』があります。人目を凌いだ「アンダーグラウンドで活動する違法なグループ」のことを描いたアクション・サスペンスだそうです。イサベルさんのインスタグラムには、撮影現場で撮られた、白い網Tシャツを着た彼女がハンマーを振り上げている、恐ろしい写真が載っているそうです。まぁその作品も早く言えばホラーっぽいということらしいです。つまりイサベル・グリルさんが演じたいと思う人物像が必然的にホラーやサスペンスの中に登場するような、内面に葛藤や主張を持った強い役が多い、ということのようです。知的で論理的な、おとめ座の彼女らしい選択だったのかもしれませんね。イサベル・グリルのマヤの役づくりについて知りたい方はこちらからどうぞ。 ヘレディタリーも大好きだし、ハッピーエンドのヒーリング映画でしたホラーではないけどすごく良かった。— Rose Tea (@Rose_Tea_27) いかがでしたか?ミッドサマーのマヤ役を演じたキャストのイサベル・グリルさんが実はホラー映画が苦手だった件についてご紹介しました。ヘレディタリーはミッドサマーと同じアリ・アスター監督のデビュー作です。わたしも観ましたがすごく怖くて面白い映画でした。イサベル・グリルさんはミッドサマーのオーディションを受けた時点では、監督の前作であるヘレディタリーを観ていなかったそうです。でもいざ観たら何週間も悪夢にうなされてトラウマになったということでした・・・。それでもマヤ役を引き受けたのは、マヤが彼女が演じたい人物像にはまっていて、女性に課せられている規範やモラルにクギを刺すような役どころだったからなんですね。今回は『ミッドサマーマヤ役キャストはホラー映画が苦手って本当?ヘレディタリーでトラウマになったエピソードを紹介』についてお話しました。イサベル・グリルさんの次回作が楽しみですね♪©Copyright2020 で、この映画で本当に、いっちばん怖くて厭で最悪なのが、チャーリーの死。 正確には、 チャーリーが死んだ夜から翌朝にかけての「ピーターの行動」 。 ピーターが目を離したすきにパーティーでナッツ入りのケーキを食べてしまったチャーリーは、アレ