渇き チョウ キャスト

目次 前回、話題性では最高クラス、内容もとにかくすごいです。今回は映画版のレビューをしつつ、後半警告文の後にはネタバレ有りで紹介します。それではまず作品概要から。   この監督は『告白』では顕著だったけれど、スローモーション映像を使うのが得意で、これにより優美さが強調されて映像美→色→音楽というよな連鎖に繋げて見る側が独特な世界観に入り込むのを助長している。  今回の『渇き。』も似た手法で独特さはバッチリ決めてきてる。その辺りも後々紹介。 名優・ ちなみにこの映画、キャストがすごい。出番少ない役にも有名俳優を使っていて、以下は役名とキャスト一覧。原作と名前が違うキャラもいるんだけれど、例えば原作読んだ方には小山内が印象に残っていると思うけれど、彼も愛川という名前に変わり瀬岡に関しては「ボク」になってるけどね(笑)   品行方正だった娘・加奈子( ちなみに原作の紹介文は部屋に麻薬のカケラを残し失踪した加奈子。その行方を追う、元刑事で父親の藤島。一方、三年前。級友から酷いイジメにあっていた尚人は助けてくれた加奈子に恋をするようになったが…。現在と過去の物語が交錯し、少しずつ浮かび上がる加奈子の輪郭。探るほどに深くなる彼女の謎。そして用意された驚愕の結末とは。 この作品、思ったより原作に忠実です。   さてここからはレビューを書きます。原作に興味がある方と、既に読んだという方は、先に前回の記事を読んでいただけると解りやすいかも。 原作の魅力は既に前回語ったので、映画ならではの魅力を先に紹介。まずはさっきちょっと書いたけれど、監督の手法。  スローモーションは確か、今作でも使われていたと思う。印象的だったのは血が跳ね上がるシーンかな。まあこれ以上はネタバレなので言えないけれど……そして色が今回も鮮やか。鮮やかというよりはチカチカするような狂気の演出の一環としてカラフルな演出が多い。 まず、冒頭から魅せられる。フラッシュバック的に、作中の映像が主人公のアニメーションも手法として何回か使われていて、効果的かつ自然で流動的な場面の切り替えを手伝っている。  そして何と言っても話題になっているのが作中の重要なシーンで流れる挿入歌。 と速報的にニュースが出たからこれでこの映画を知った人も多いかもしれない。  普通に中毒性のあるライブで盛り上がりそうな曲だけれど、作中ではうまい使われ方がされている。単純に流すだけじゃなく、より狂気的に演出していて、かなり強く印象に残る。映画版独特の見どころの一つ。  ここまでは映画版だけに存在する映像と音について。ここからはストーリーについて。  ストーリーは意外にも原作の本筋からは外れない。かなり忠実に再現されていると言っていいと思う。とはいえ、一応重要な変更点が2つくらいはあるのだけれど、キャラクターが変わるというあたりをスルーして単純にストーリーだけ追っていけば原作に近い。 ネタバレは後でするとして、ネタバレしない範囲での魅力的な変更点について。まず抽象的な話だけれど、原作は暴力(端的に言えばエログロ)をずっと陰鬱な雰囲気で描いている。それが良さでもあって、僕は個人的には好きだった。その一方で、映画は暴力性(エログロ)を「エンターテイメント」にするというちなみにグロさやエロさみたいなところは、みんなが言うほど過激ではないと思う。僕が思い出したのは『 暴力性をエンターテインメントとして演出する面白さを助長するのが、前述した奇抜な色と音の演出、キャストや歌の演出だ。   加奈子役の妖艶さとミステリアスな言動がまったく違和感にならないのが不思議。ただストーリー上彼女が何故ここまでのカリスマ性を持っているかは理論的に説明はされない。原作ではおぼろげに説明されるのだけれど映画ではちょっと設定の変更が効いてきてしまってやや消化不良か。ただ、それを補うレベルで、そもそもある意味彼女をキャとにかく加奈子のドラッグのような魅力は もう一人僕が結構気に入ったのが浅井は原作では真面目だけど本心を隠して策士的に任務を遂行する刑事なのだけれど、映画では完全にキャラが変わってて驚いた。でもこれがかなり癖があって面白い。終始ヘラヘラして役所演じる藤島と電話でやり合う悪辣な刑事は良い役だった。ちょっと「妻夫木すげえ!」と感心してしまったのでしばらくはこのキャラのイメージが抜けない気がする(笑) 遠藤役のただ持ち味が発揮される前に終わってしまったという感じはする。愛川役の  ネタバレを最小限に抑えるとこんなもんかなぁ。学生はまだ1000円で観られるので気になったら見にいっちゃってもいいかもしれないね。ただ暴力的なのがダメだと疲労感が凄いかもしれないw渇き。の何が面白いって、青春ものだと思って観にきたカップルと女子高生数人が、始まる前はうるさかったのに、終わった後めっちゃ疲れた顔で帰って行ったことだな ある意味、視聴注意ですw     やっとネタバレできる(つ∀-)幾つか変更点を紹介して終えたいと思います。  重要な原作との違いが2点。結構根本的な問題に関わる変更だね。 まず原作だと、加奈子のカリスマ性の理由は棟方が説明してくれたりする。映画版だと棟方の代わりに松永という男が登場するがこいつはあんまり仕事をしないww 棟方曰く加奈子の欠けた心は、同じくどこか欠けてしまった人達を巻き込んでいくということだろう。 ただ映画版ではこのセリフがないので、説明されない。そしてもっと重要なのが、加奈子が欠けてしまった理由。 原作では 映画ではこのあたりも完全に変更される。まず酔った藤島は加奈子を「犯す」のではなく「殺そうとする」と変更されている。さらに、これは加奈子が藤島が内心で最も望んでいた「愛してる」という言葉を、彼に囁き、キスまでする。それで高笑い。見てる側の判断に委ねるところなのだろうけれど、どうやら原作のように加奈子は完全な被害者ではないと解る。まるで悪魔、悪女だった。 これよりもっと凄いのが、これは加奈子の嘘であるか、自責の念であるか、言葉通りの意味か、どう解釈するかで少々事情が変わる。あるいはその3つの可能性全てがない混ぜになったような真相なのかもしれない。人間の心理は実際にはそれほどに複雑であるのかもしれない。 ただ、この2点の変更点で重要なのは、解釈として「加奈子は元々、天性の悪であった」という可能性が捨てきれなくなったことだと思う。解釈の幅としてそれを明確に呈示してきたのが原作と映画で一番違うところかな。 例えば、映画の東と加奈子が車内で会話するシーンも原作ではないニュアンスがある。「ウケる」と言ってみたり、どうやら映画版の加奈子はきわめて「悪」に近いのかもしれないと思わせるところはある。ちなみに加奈子の殺され方は原作では絞殺だが映画では刺殺になっている。  他にも、「ボク」こと瀬岡が野球部をやめた理由がちょっと変わっている。原作では青春的な心情があったんだけれど、映画では完全に加奈子にのめり込んでやめている。  屋上でサイテーな藤島とサイテーな愛川が殺しあって、そこにサイテーな浅井が入ってくるっていうのもなかなか凄い。もっと細かいところを言うと、藤島の  浅井刑事も原作では途中から出番ないけれど、映画では深く関わってくるね。屋上での戦いで妻夫木演じる浅井がポーンと跳ね飛ばされているけれど、ちょっとコミカルな感じになっていて笑ってしまった。それでもヘラヘラする彼もなかなか濃いキャラだが……  あとはチョウ(張)を殺したのが原作ではヤクザ側の咲山に同行した藤島であるけれど、映画ではチョウ側の愛川が殺している。これはちょっと驚いた。原作では藤島が「娘のために復讐を果たした」と自身を納得させたり、終盤のクライマックスの一つであったりするからカットすると思わなかったけれど、あっさり切ったね。これによって藤島がその後  最後に、重要な変更点といえば、加奈子を殺した犯人である映画では藤島は東に雪山で加奈子の死体を掘り起こさせている。当然不可能に近く、このシーンは原作よりもどんよりした絶望感が漂う。ついには藤島自身が雪をかき分けて掘り起こし始めてこの映画は終わるのだけれど、まさにドラッグを失った中毒者のように藤島の渇望する加奈子との再会はやはり叶わないものなのかもしれない。 関連記事: